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映画【ハドソン川の奇跡】ニューヨーク上空で起きた実話

2016年9月24日より、映画「ハドソン川の奇跡」が公開されました。

この映画は2009年1月15日にニューヨークで起こった史上最大の航空機事故を題材にしており、当時操縦していたサレンバーガー機長の自叙伝が映画の基となっています。

原題は機長のニックネームであるサリー”Sully”です。監督はクリント・イーストウッド。イーストウッド監督といえば、実話ベースの映画でハズレがないと個人的には思っています。

正直、面白いか面白くないかというのを議論する映画ではありませんが、内容と感想について述べます。

0.ハドソン川の奇跡予告動画

1.映画のロケーション

ニューヨーク市マンハッタン区がロケーションとなります。ラガーディア空港を出発し、ノースカロライナ州シャーロット・ダグラス国際空港を経由して、ワシントン州シアトル・タコマ国際空港に行くフライトプランでした。

2.悪夢

映画はチェスリー・サレンバーガー機長(トム・ハンクス)とジェフ・スカイルズ副機長(アーロン・エッカート)がUSエアウェイズ1549便(機体はエアバスA320)を操縦しているところから始まる。

無事に離陸した直後、バードストライク(鳥の衝突)により両翼のエンジンが損傷という前代未聞の事態が発生する。長年の経験より復旧プランを試すもどれも効果がないため、サリーはラガーディア空港に戻ると管制塔に連絡。

しかし、高度が足りず飛行機はニューヨークの町中に墜落してしまう。ここでサリーの目が覚める。はぁ、はぁ、なんという悪夢。この時サリーはハドソン川に不時着した後のホテルにいた。

3.一躍ニューヨークのヒーローに

搭乗員5名を含む乗客155名が全員無事に救出されたことより、サリーはニューヨーク市民より一躍ヒーローと呼ばれていた。報道関係もすべてその内容でもちきりである。

テレビ局に向かうときのドライバーにも「我々のヒーローだ、乗っていただき光栄です」と言われる。サリーはヒーローという言葉に戸惑いながらもテレビ局に到着する。

この時インタビュアーとして登場したのが、ニュースキャスターのケイティ・クーリックであった。彼女は実際にサレンバーガー機長にインタビューした本人である。

クーリックはサリーに「ニューヨーク市民からはヒーローと呼ばれていますがいかが?」という質問を投げかける。サリーは「私はヒーローではない、仕事をしたまでだ」と返す。なんたる仕事人かと思う。

報道関係で表に出ていた一方、その裏では事故の調査が淡々と進められていた。

4.国家運輸安全委員会の調査

どこの会社でもそうだが、何か重大な事故があればすぐに調査が行なわれる。人的要因、物的要員、環境的要因などあらゆる方面から原因究明が行なわれる。

今回の航空機事故についてもすぐに国家運輸安全委員会(National Transportation Safety Board:NTSB)より調査が入り、サリーとジェフは彼らに呼ばれた。

  • 国家運輸安全委員会とは
    米国における輸送関連事故の調査を行なう機関。航空機事故だけでなく、鉄道事故、高速道路事故、海難事故など対象は幅広い。調査より、今後発生しうる事故の対策を行ない未然の事故防止に努めている。

アルコールの摂取は?麻薬の摂取は?家族との関係は?などまずは人的要因がないかを調べられる。もちろん彼らにそんな非はない。

次に、なぜラガーディア空港に戻るといっておきながら戻らなかったのかという問いかけについて、サリーは長年の経験から戻れなかったという回答をする。NTSBのメンバーは顔を合わせる。

確かに経験からという回答は数値で出るものではないので、確定的な要素はない。ゆえに第三者は根拠を求める。全員が無事に生還したにもかかわらずである。

さらに、サリーは両翼の推力がなくなったと判断したが、実は片翼は生きていたんじゃないかということを突きつけられる。コンピュータのデータからは片翼は生きていたというデータが残っていたのだ。ただ、この時点で疑惑の片翼は着水時に破損して川底にあるため、詳細は分からず。

正直データが何だと思う。コンピュータは嘘をつかないとでも思っているのだろうか。しょせんは人間が作ったものなので、誤計算は当然含まれる可能性がある。

5.日没後のマラソン

NTSBの調査を受け、サリーとジェフは疲れ切る。サリーはもしかしたら事故で全員生還できなかったかもしれないという不安に度々かられ、日課であるマラソンを行なう。少しでも気を紛らわしたいと思ったのではないか。

6.空軍時代の思い出

サリーが走っていると、空軍時代に操縦していた戦闘機が置いてあり昔を思い出す。昔、戦闘機に乗っていたときに戦闘機の調子がおかしくなった。

無線からは脱出しろとの声もあったが、サリーは大丈夫だと判断し飛行場まで自走で戻る。何事もなく着陸し、ナイスパイロットと褒められる。

今回の事故でも同じように、ハドソン川への不時着という判断ではなく、飛行場を目指していれば無事に戻れたのではないかということが脳裏によぎる。せっかく気を紛らわしていたのに変なことを思い出してしまった。

7.サリーというお酒

もう一度気を紛らわそうと、近くにあったバーに入る。すると店主からすぐに機長だということがばれる。テレビにも自分が映っておりサリーは変な気分になる。

すると、バーの店長はサリーというお酒を作ったといい一緒に乾杯する。そして回想に入る。

8.すべてが物語られる

本作では事故後をベースに時間は進んでいるが、回想シーンが度々挿入される。小出しに回想シーンを挿入し、最後にすべて物語られるという構成になっている。

バーの回想で物語の全容が分かる。ここで乗客にも少しフォーカスする。観た後に知ったのだが、乗客の多くが本人役として出演しているのである。これはリアルなわけだ。

離陸する前の搭乗シーンからはじまり事故後の内容が描かれる。事故発生後、サリーは高度が足りないことからラガーディア空港に戻ることを断念する。

管制塔からは何度も近くのテターボロ空港が使えるという指示があったが、サリーはテターボロ空港も無理だと判し、独断でハドソン川への着水を決める。本人には確信があったのだろう。人間いけると思ったらいけるのである。こればっかりはいくら技術が発展したとしてもコンピュータでは計り知れない。

着水前にサリーは乗客に向けて一言「姿勢を低くして、衝撃に備えてください」と。とんでもない状況にも関わらず、不安をあおることのない言葉でアナウンスをする。

機体が半分に折れることなくハドソン川への不時着が完了。そこから徐々に浸水がはじまり乗客は混乱する。だが、搭乗員5名の迅速な対応により乗客150名全員が無事に外に出る。(余談だが、映画の海猿では東京湾に不時着した飛行機は真っ二つに分かれて沈没してしまう)

異変に気づいた周辺の船が、メーデーメーデーと救援のために不時着した飛行機のもとへ向かう。機長の判断もそうだが、周辺の船、警察の迅速な救助も賞賛に値する。

サリーが一番最後に機体から脱出し、救助船に乗り込む。陸に上がってからも、サリーは乗客全員が無事かどうかが気がかりで辺りに聞いて回る。

すべてのタイミングがよかったことから乗客全員無事であることが確認でき、サリーは胸をなでおろす。

ここで回想が終わり、サリーはタイミングという点に気がつく。同僚のラリー・ルーニー( クリス・バウアー)に、公聴会で使われる飛行シミュレータの内容と、音声記録を確認させてくれと頼む。

9.公聴会開始

NTSBが、今回の不時着が本当に正しい判断だったのかということを証明するために公聴会を開いた。事故当時の状況を完全に再現したシミュレータを用いて、ラガーディア空港に向かった場合とテターボロ空港に向かった場合のシミュレーションを行なう。

すると、どちらも機体の損傷なく無事に着陸することができたのである。これを見たサリーは、このシミュレーションには人間性が考慮されていないと指摘する。人間は色々考えて判断するため、機械のように即座に行動できるものではない。

そこでNTSBは判断時間として35秒を設定し、もう一度シミュレーションを行なう。すると、どちらの空港もたどり着けず墜落してしまう結果となった。公聴会では多くの関係者が見ているので、結果は明らかである。サリーの判断が正しかったのだ。

また公聴会では片翼の推力は失われていなかったのでは?という件についても結果が出ていた。診断結果は、エンジンは損傷して推力は失っていたというものであった。片翼の推力があったというのはコンピュータの誤計算によるものだった。こちらもサリーの経験による直感が正しかったのである。

最後に、NTSBからジェフに万が一同じことが起こったらどうしますかと尋ねたところ、ジェフは「今度やるなら僕は7月にやりたい(暖かい時期)」と冗談を言ってエンドロールに入る。

※エンドロールでは本物のサレンバーガー機長とその妻ローリー・サレンバーガー、及び乗客全員?が登場する。本物のサリーはトム・ハンクスより細身であった。

・まとめ

本作で私はサレンバーガー機長及びスカイルズ副機長の冷静さを一番に感じました。前代未聞の事象が発生したにも関わらず、冷静に最善の選択をしたということがどれほど凄いことか。まさに奇跡です。

また、データは常に正しいわけではなく、人間の直感が正しい道を示すことを教えられます。まぁ常に正しいわけではなく、相当な経験が物を言います。

映画館で見るのがおすすめとは言いませんが、実話ということを認識して一度見ておくといい経験になると思います。

ちなみにニューヨーク州知事のデビッド・パターソンは、この件を「ハドソン川の奇跡」(Miracle on the Hudson) と呼んだそうです。まさに映画の邦題ですね。

色々見ていると当時のフライト状況を表す地図がありました。離陸してからの数分間でとてつもない思考の応酬があったものと推察します。


出典:ウィキメディア・コモンズ

▼下記サイトには本物の通話記録と乗客の言葉が載っています。

155人を救った機長の「その後」 ハドソン川の奇跡、全員生還の真実(withnews)

▼サリー機長の自叙伝はこちら。

以上、「映画【ハドソン川の奇跡】ニューヨーク上空で起きた実話」の記事でした。

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